在留資格の取消し(入管法第22条の4)と届出義務|「3か月」で在留資格を失わないために
在留資格の取消し(入管法第22条の4)と届出義務|「3か月」で在留資格を失わないために
在留資格は、いったん許可を受けたら在留期間が満了するまで安泰、というものではございません。入管法第22条の4は、一定の事実が判明したときに法務大臣が在留資格を取り消すことができると定めており、実務上は「退職後3か月」「離婚後6か月」といった期間の経過が引き金になる例が最も多くなっております。本記事では、取消事由を条文の号ごとに整理し、あわせて中長期在留者に課された届出義務とその期限を確認いたします。
参照元: e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」(昭和26年政令第319号)第19条の7〜第19条の16、第22条の4、第22条の5、第24条、第70条、第71条の2、第71条の5/出入国在留管理庁「在留資格の取消し(入管法第22条の4)」「所属機関等に関する届出」「配偶者に関する届出」「出入国審査・在留審査Q&A」/同庁「令和7年の『在留資格取消件数』について」(令和8年3月27日公表)
永住許可の取消制度とは別の制度です
はじめに整理しておきたい点がございます。本記事で扱うのは 入管法第22条の4による「在留資格の取消し」 であり、令和6年(2024年)の入管法改正で新設された 永住許可の取消制度とは別の制度 です。根拠規定も、対象となる行為も異なります。永住許可の取消制度については永住許可取消制度とは|対象行為と防止策を解説をご覧ください。
もっとも、両者は無関係ではございません。第22条の4第1項は「別表第一又は別表第二の上欄の在留資格をもつて本邦に在留する外国人」を対象としており、別表第二には永住者も含まれます。したがって永住者の方も、不正な手段による許可取得や住居地の届出に関する事由については、第22条の4の対象になります。
なお、難民の認定又は補完的保護対象者の認定を受けている方は第22条の4の対象から除かれ、別に第61条の2の11が置かれております。在留資格そのものの基本的な考え方は在留資格とは?基本を押さえようをご参照ください。
取消事由は10号|条文の整理
第22条の4第1項は、次の各号の事実のいずれかが判明したときに、法務省令で定める手続により在留資格を取り消すことができると定めています。
| 号 | 取消事由 | 対象 |
|---|---|---|
| 第1号 | 偽りその他不正の手段により、上陸拒否事由(第5条第1項各号)のいずれにも該当しないものとして上陸許可の証印又は許可を受けたこと | 全在留資格 |
| 第2号 | 第1号のほか、偽りその他不正の手段により上陸許可の証印等を受けたこと | 全在留資格 |
| 第3号 | 第1号・第2号のほか、不実の記載又は記録のある文書・図画・電磁的記録の提出又は提示により上陸許可の証印等を受けたこと(不実の記載により交付を受けた在留資格認定証明書、それにより旅券に受けた査証を含む) | 全在留資格 |
| 第4号 | 偽りその他不正の手段により、在留特別許可(第50条第1項)又は第61条の2の5第1項の許可を受けたこと | 全在留資格 |
| 第5号 | 別表第一の在留資格の者が、その在留資格に応じた活動を行っておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留していること(正当な理由がある場合を除く) | 別表第一 |
| 第6号 | 別表第一の在留資格の者が、その在留資格に応じた活動を継続して3か月(高度専門職のうち別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄第2号に係るものは6か月)以上行わないで在留していること(正当な理由がある場合を除く) | 別表第一 |
| 第7号 | 日本人の配偶者等・永住者の配偶者等(配偶者の身分を有する者に係るものに限る)の在留資格の者が、配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6か月以上行わないで在留していること(正当な理由がある場合を除く) | 別表第二の一部 |
| 第8号 | 新たに中長期在留者となった者が、上陸許可の証印又は許可を受けた日から90日以内に住居地の届出をしないこと(正当な理由がある場合を除く) | 中長期在留者 |
| 第9号 | 中長期在留者が、届け出た住居地から退去した日から90日以内に新住居地の届出をしないこと(正当な理由がある場合を除く) | 中長期在留者 |
| 第10号 | 中長期在留者が、虚偽の住居地を届け出たこと | 中長期在留者 |
第5号と第6号の違いにご注意ください。第5号は「本来の活動をせず、別の活動をしている(しようとしている)」場合で、期間の定めがございません。第6号は「本来の活動を3か月以上していない」場合です。第7号の6か月は、日本人の配偶者等・永住者の配偶者等に限られ、家族滞在は含まれません(日本人の特別養子や日本人の子として出生した身分を兼ねる方などは除かれます)。
実際にどの号で取り消されているか
出入国在留管理庁が令和8年(2026年)3月27日に公表した「令和7年の『在留資格取消件数』について」によりますと、令和7年(2025年)の取消件数は1,446件で、前年(1,184件)から22.1%増加し過去最高となりました。
| 区分 | 内訳 |
|---|---|
| 取消事由別 | 第6号 999件(69.1%)/第5号 350件(24.2%)/第2号 48件(3.3%) |
| 在留資格別 | 技能実習 973件(67.3%)/留学 343件(23.7%)/技術・人文知識・国際業務 63件(4.4%) |
| 国籍・地域別 | ベトナム 947件(65.5%)/インドネシア 94件(6.5%)/スリランカ 91件(6.3%) |
実務上の要点: 取消しの約7割が第6号、約2割が第5号です。つまり取消しの大半は、偽装や不正ではなく、「本来の活動をしていない期間が積み上がったこと」 によって生じております。技術・人文知識・国際業務の在留資格に固有のリスクは技人国ビザの取消リスク|在留資格取消制度と予防策でも解説しております。
「正当な理由」があるとされる場合
第5号から第9号までには、いずれも「正当な理由がある場合を除く」という括弧書きが付されています。出入国在留管理庁の「出入国審査・在留審査Q&A」では、次のような例が示されております。
活動を3か月以上行っていないことについて(第6号関係)
- 稼働先を退職後、再就職先を探すために会社訪問するなど具体的な就職活動を行っていると認められる場合
- 在籍していた教育機関が閉校した後、他の教育機関に入学するために必要な手続を進めている場合
- 病気治療のため長期間の入院が必要でやむを得ず教育機関を休学している者が、退院後は復学する意思を有している場合
- 専修学校を卒業した留学生が本邦の大学への入学が決定している場合
配偶者としての活動を6か月以上行っていないことについて(第7号関係)
- 配偶者からの暴力を理由とした避難又は保護が必要な場合
- 子どもの養育等やむを得ない事情により別居しているが生計を一にしている場合
- 本国の親族の傷病等の理由により長期間出国している場合
- 離婚調停又は離婚訴訟中の場合
いずれも「事情があった」と口頭で述べるだけでは足りません。応募履歴、面接の記録、医師の診断書、調停の係属を示す書面など、期間中に何をしていたかを客観的に示せる資料 を残しておくことが実務上の分かれ目になります。
取消しの手続き|意見の聴取と出国猶予期間
在留資格の取消しは、いきなり通知が来て終わるものではございません。第22条の4第2項以下が手続を定めています。
| 段階 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 意見の聴取 | 法務大臣が指定する入国審査官が、対象となる外国人の意見を聴取しなければならない | 第22条の4第2項 |
| 事前の通知 | あらかじめ、意見の聴取の期日・場所・取消しの原因となる事実を記載した意見聴取通知書を送達する(急速を要するときは口頭による通知が可能) | 同条第3項 |
| 本人の権利 | 本人又は代理人が期日に出頭し、意見を述べ、証拠を提出することができる | 同条第4項 |
| 応じない場合 | 正当な理由がなくて意見の聴取に応じないときは、意見の聴取を行わずに取り消すことができる | 同条第5項 |
| 取消しの実行 | 法務大臣が在留資格取消通知書を送達して行う | 同条第6項 |
| 出国猶予期間 | 第1号・第2号以外の事由による取消しでは、30日を超えない範囲内で出国のために必要な期間を指定する。ただし第5号による取消しで逃亡すると疑うに足りる相当の理由があるときは指定しない | 同条第7項 |
| 条件の付与 | 期間を指定する場合、住居及び行動範囲の制限その他必要と認める条件を付すことができる | 同条第8項 |
重要: 意見の聴取は、反論と立証の機会です。通知書が届いた時点で「もう終わりだ」と考えて放置することが最も避けるべき対応です。正当な理由を裏づける資料は、この期日までに整えます。
取消し後の帰結も号によって異なります。第1号・第2号による取消しを受けた者で本邦に残留するものは退去強制の対象となり(第24条第2号の2)、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科するとされています(第70条第1項第3号)。指定された出国猶予期間を経過して残留した場合も同様です(第24条第2号の4、第70条第1項第3号の3)。
なお、第7号(配偶者としての活動を6か月以上行っていない)により取消しをしようとする場合について、第22条の5は、法務大臣は在留資格の変更(第20条第2項)又は永住許可(第22条第1項)の申請の機会を与えるよう配慮しなければならないと定めています。配偶者の在留資格そのものの要件は日本人の配偶者等(配偶者ビザ)完全ガイドをご覧ください。
届出義務の一覧|期限はいずれも14日以内
取消事由の第8号から第10号は住居地の届出に関するものですが、法律が課している届出義務はそれより広く、期限も取消事由の「90日」より短い 14日以内 です。90日は取消しのラインであって、届出の期限ではございません。
| 届出 | 根拠条文 | 期限 | 届出先 |
|---|---|---|---|
| 新規上陸後の住居地の届出 | 第19条の7第1項 | 住居地を定めた日から14日以内 | 住居地の市区町村(在留カードを提出) |
| 在留資格変更等に伴う住居地の届出 | 第19条の8第1項 | 住居地を定めた日(既に定めている場合は許可の日)から14日以内 | 住居地の市区町村 |
| 住居地の変更届出(引っ越し) | 第19条の9第1項 | 新住居地に移転した日から14日以内 | 新住居地の市区町村 |
| 住居地以外の記載事項の変更届出(氏名・生年月日・性別・国籍の属する国又は地域) | 第19条の10第1項 | 変更を生じた日から14日以内 | 出入国在留管理庁長官(地方出入国在留管理官署) |
| 所属(活動)機関に関する届出 | 第19条の16第1号 | 事由が生じた日から14日以内 | 出入国在留管理庁長官 |
| 所属(契約)機関に関する届出 | 第19条の16第2号 | 事由が生じた日から14日以内 | 出入国在留管理庁長官 |
| 配偶者に関する届出 | 第19条の16第3号 | 事由が生じた日から14日以内 | 出入国在留管理庁長官 |
| 在留カードの返納 | 第19条の15 | 効力を失った事由が生じた日から14日以内(第19条の14第3号・第5号の場合は直ちに) | 出入国在留管理庁長官 |
住居地の届出は市区町村の窓口で行い、在留カード等を提示して住民基本台帳法の届出をしたときは、住居地の届出をしたものとみなされます(第19条の7第3項、第19条の9第3項)。
所属機関等に関する届出(第19条の16)の3類型
出入国在留管理庁の案内では、次の3つに整理されています。
| 号 | 対象の在留資格 | 届け出るべき事由 |
|---|---|---|
| 第1号(活動機関) | 教授、高度専門職1号ハ、高度専門職2号(ハ)、経営・管理、法律・会計業務、医療、教育、企業内転勤、技能実習、留学、研修 | 活動機関の名称・所在地の変更、消滅、当該機関からの離脱、移籍 |
| 第2号(契約機関) | 高度専門職1号イ・ロ、高度専門職2号(イ・ロ)、研究、技術・人文知識・国際業務、介護、興行、技能、特定技能 | 契約機関の名称・所在地の変更、消滅、契約の終了、新たな契約の締結 |
| 第3号(配偶者) | 家族滞在(配偶者として日常的な活動を行う者)、日本人の配偶者等(配偶者の身分の者)、永住者の配偶者等(配偶者の身分の者) | 配偶者との離婚又は死別 |
届出方法は、出入国在留管理庁電子届出システムによるオンライン届出、最寄りの地方出入国在留管理官署の窓口への持参、東京出入国在留管理局への郵送のいずれかです。転職は「離脱・契約の終了」と「移籍・新たな契約の締結」の両方に当たりますので、同庁のQ&Aでも、在留期間更新許可を受けていても転職の届出は必要であると案内されております。
第3号は「離婚又は死別」が届出事由です。別居しているだけでは届出事由に当たりませんが、別居が続けば第22条の4第1項第7号の取消事由(6か月)に触れうる、という点は分けて理解しておく必要がございます。
届出を怠るとどうなるか
不利益は「取消し」だけではございません。
| 違反 | 罰則 | 根拠 |
|---|---|---|
| 第19条の7第1項・第19条の8第1項に違反して住居地を届け出なかった | 20万円以下の罰金 | 第71条の5第1号 |
| 第19条の9第1項に違反して新住居地を届け出なかった | 20万円以下の罰金 | 第71条の5第2号 |
| 第19条の10第1項、第19条の15、第19条の16に違反した | 20万円以下の罰金 | 第71条の5第3号 |
| 第19条の7・第19条の8・第19条の9・第19条の10・第19条の16の届出に関し虚偽の届出をした | 1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金 | 第71条の2第1号 |
加えて、在留期間更新や永住許可の申請では法令の遵守状況が審査されます。同庁のQ&Aでも、届出をしなかったり虚偽の届出をした場合には罰則があるほか、在留諸申請で不利になる場合があると案内されております。期限を大きく過ぎてしまった場合でも、判明した時点で速やかに届け出るよう求められています。放置するより、遅れてでも届け出るほうが有利 という点は押さえておきたいところです。
退職したら、まず何をするか
就労資格の方が退職した場合の実務は、次の順序で考えます。
1. 14日以内に所属(契約)機関に関する届出をする
契約の終了は第19条の16第2号の届出事由です。転職先が決まっていなくても、離職の事実だけで届出は必要です。電子届出システムであれば24時間受付ですので、退職日が確定した時点で手続してしまうのが確実です。
2. 転職先が決まったら、就労資格証明書の交付申請を検討する
就労資格証明書は、その方が行うことができる収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を証明する文書です(入管法第19条の2第1項)。新しい職務内容が現在の在留資格の範囲に収まるかを、更新の時期を待たずに確認できます。手数料は窓口申請2,000円、オンライン申請1,600円です。なお同条第2項は、活動内容が明らかな場合に、この証明書を提示・提出しないことを理由として不利益な取扱いをしてはならないと定めています。転職時の手続の全体像は技人国ビザで転職する場合の手続き|届出・就労資格証明書・更新をご覧ください。
3. 転職先が決まらないまま時間が経つ場合
第22条の4第1項第6号の「3か月」を意識しつつ、就職活動を客観的に記録します。求人への応募履歴、面接の日程、エージェントとのやり取りなど、後から示せる形で残してください。3か月に近づいても見通しが立たない場合は、在留期間の残りと今後の方針を踏まえ、在留資格変更や出国の準備を含めて早めに検討することになります。
注意: 「在留期間がまだ1年残っているから大丈夫」という理解は誤りです。第22条の4の取消しは、在留期間の残りとは無関係に行われます。
まとめ
- 在留資格の取消しは入管法第22条の4に基づく制度で、令和6年改正の永住許可の取消制度とは別の制度です
- 取消事由は10号あり、実際の取消しは第6号(3か月以上活動していない)と第5号で約9割を占めます
- 第5号から第9号には「正当な理由がある場合を除く」とあり、資料で示せるかどうかが決め手になります
- 手続では意見の聴取が行われ、本人又は代理人が意見を述べ証拠を提出できます
- 届出義務の期限はいずれも14日以内で、取消事由の「90日」とは別の基準です
- 退職したら、まず14日以内の届出。次に就労資格証明書の検討という順序になります
当事務所のサポート
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よくあるご質問
退職してから何日以内に届出が必要ですか。
契約機関との契約が終了した日から14日以内に、所属(契約)機関に関する届出が必要です(入管法第19条の16第2号)。届出をしなかった場合は20万円以下の罰金の対象となります(同法第71条の5第3号)。
退職後、転職先が決まらないまま3か月が経つと在留資格は取り消されますか。
入管法第22条の4第1項第6号は、在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行わないで在留していることを取消事由としていますが、正当な理由がある場合は除かれます。出入国在留管理庁のQ&Aでは、退職後に再就職先を探すため会社訪問をするなど具体的な就職活動を行っていると認められる場合が正当な理由の例として示されています。
離婚したら在留資格はすぐに取り消されますか。
日本人の配偶者等・永住者の配偶者等については、配偶者としての活動を継続して6か月以上行わないで在留していることが取消事由です(入管法第22条の4第1項第7号)。正当な理由がある場合は除かれ、離婚調停中・離婚訴訟中などが同庁のQ&Aで例示されています。また離婚・死別の日から14日以内に配偶者に関する届出が必要です(同法第19条の16第3号)。
在留資格が取り消されると、すぐに日本を出なければなりませんか。
入管法第22条の4第7項により、第1号・第2号以外の事由で取り消す場合には30日を超えない範囲で出国のために必要な期間が指定されます。ただし第5号による取消しで逃亡すると疑うに足りる相当の理由があるときは指定されません。第1号・第2号による取消しは退去強制の対象となります(同法第24条第2号の2)。
この記事の取消制度は、永住許可の取消制度と同じものですか。
別の制度です。この記事で扱うのは入管法第22条の4による在留資格の取消しで、令和6年改正で新設された永住許可の取消制度とは根拠も対象も異なります。ただし永住者も中長期在留者ですので、住居地の届出などについては第22条の4の対象になります。
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