【令和9年4月1日施行】育成就労制度とは|技能実習からの移行と受入企業の準備
【令和9年4月1日施行】育成就労制度とは|技能実習からの移行と受入企業の準備
技能実習制度を発展的に解消し、新たに創設された育成就労制度が、令和9年(2027年)4月1日から始まります。本記事では、育成就労制度の目的と枠組み、技能実習制度との違い、制度の核心である本人の意向による転籍、そして技能実習生に適用される経過措置を、一次情報に基づいて整理いたします。技能実習生を受け入れている企業・監理団体の方、そして現在技能実習中のご本人に向けた内容です。
参照元: 出入国在留管理庁「育成就労制度について」/同「育成就労制度の概要(令和7年12月改訂)」/同「育成就労制度Q&A」/出入国在留管理庁・厚生労働省編「育成就労制度運用要領」/外国人技能実習機構「技能実習3号への移行について」
育成就労制度とは
令和6年6月21日、「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第60号)が公布されました。これにより、技能移転による国際貢献を目的とする技能実習制度を発展的に解消し、我が国の人手不足分野における人材の育成・確保を目的とする育成就労制度が創設されました。
制度の目的は、「育成就労産業分野」において日本での3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成するとともに、当該分野における人材を確保することとされています。育成就労産業分野とは、特定技能制度の受入れ分野である特定産業分野のうち、就労を通じて技能を修得させることが相当なものを指します。特定技能の受入れ対象分野であっても、国内での育成になじまない分野は育成就労の対象外となります。
制度の柱は次の3つです。
- 育成就労計画の認定制 育成就労外国人ごとに作成する育成就労計画を認定制とし、育成就労の期間(3年以内)、育成就労の目標(業務、技能、日本語能力等)、内容等を記載して、外国人育成就労機構による認定を受けます。
- 監理支援機関の許可制 雇用関係の成立のあっせんや、育成就労が適正に実施されているかの監理を行う監理支援機関を許可制とします。
- 分野別運用方針による受入れ上限 分野別運用方針において、生産性向上及び国内人材確保を行ってもなお不足する人数に基づき分野ごとの受入れ見込数を設定し、これを受入れの上限数として運用します。
技能実習制度と何が変わるのか
出入国在留管理庁の資料で確認できる範囲で、主な違いを整理します。
| 項目 | 技能実習制度 | 育成就労制度 |
|---|---|---|
| 目的 | 技能移転による国際貢献 | 人手不足分野における人材の育成・確保 |
| 期間 | 1号・2号・3号と段階を踏む | 3年間(育成就労計画に定める期間は3年以内) |
| 受入れの範囲 | 職種・作業ごとの定め | 育成就労産業分野。分野別運用方針で受入れ見込数の上限を設定 |
| 本人の意向による転籍 | 制度として予定されていない | 一定の要件の下で認められる |
| 就労開始前の日本語 | 職種ごとの定めによる | 日本語能力A1相当以上の試験に合格、又はそれに相当する日本語講習の受講 |
| 監理を行う機関 | 監理団体(許可制) | 監理支援機関(許可制・基準は厳格化。外部監査の措置が法律上の義務) |
| 計画の認定・実地検査 | 外国人技能実習機構 | 外国人育成就労機構 |
| 送出しの適正化 | — | 二国間取決め(MOC)の作成、送出機関に支払う手数料が不当に高額にならない仕組みの導入 |
監理支援機関については、育成就労実施者と密接な関係を有する役職員を、個人情報の管理に係る業務及び入国後講習の実施に係る業務以外の業務に関わらせてはならないとされています(育成就労法第39条第5項)。運用要領では、直接的な関与だけでなく、上司や決裁者の立場での指示・命令、起案の修正、第三者を介した働きかけなども「業務への関与」に含まれると明記されています。
重要: 技能実習制度の監理団体であっても、監理支援機関の許可を受けなければ監理支援事業を行うことはできません。なお外国人技能実習機構は、技能実習制度に基づく監理団体の新規許可の申請は令和8年(2026年)9月30日までに行うよう案内しています。
本人の意向による転籍 — 制度の核心
育成就労制度では、育成就労外国人の本人意向による転籍を一定要件の下で認めることなどにより、労働者としての権利保護を適切に図ることとされています。要件は育成就労法第9条の2第4号イ・ロ・ハに定められています。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 転籍制限期間の経過(同号イ) | 新たな育成就労計画の開始日において、従前(複数ある場合は直近)の育成就労実施者が育成就労を行わせた期間が、分野別運用方針で定める転籍制限期間を超えていること |
| 技能及び日本語能力(同号ロ) | 分野別運用方針で定める一定の技能に係る試験及び日本語能力に係る試験に合格していること |
| 転籍先の基準(同号ハ) | 転籍先が現に受け入れている育成就労外国人が転籍者等のみでないこと、本人意向転籍者の数が転籍後に在籍することとなる育成就労外国人全体の3分の1以内であること 等 |
転籍制限期間の長さは、制度の運用で最も誤解されやすい点です。運用要領には「転籍制限期間については、育成就労産業分野ごとに、その業務内容等を踏まえて、分野別運用方針において1年から2年の範囲内で定めることとしています」と記載されています。用語の解説でも「育成就労産業分野ごとに、分野別運用方針において、1年以上2年以下の範囲内で定める育成就労実施者の変更を制限する期間」とされています。
注意: 転籍制限期間は全分野一律ではありません。「1年で転職できる」「2年は動けない」と一律に理解せず、必ずご自身の分野の分野別運用方針をご確認ください。
さらに実務上重要な点が3つあります。
第一に、分野別運用方針で1年を超える転籍制限期間が定められた分野であっても、育成就労実施者が自らの判断で転籍制限期間を1年とすることが可能です。この場合の期間は育成就労計画の「育成就労実施者の変更を制限する期間」の欄に記載されますので、ご本人はここで確認できます。逆に1年を超える期間を設定する場合は、1年を経過した後に昇給その他の分野別運用方針で定める待遇の向上を図ることが求められます。
第二に、大都市圏への人材集中を防ぐ仕組みがあります。住所が指定区域外(いわゆる大都市圏)にある育成就労実施者が、指定区域内(地方圏に相当)から受け入れることができる本人意向転籍者は、転籍後に在籍することとなる育成就労外国人全体の6分の1以内とされています。ただし転籍後に在籍することとなる育成就労外国人が5人以下の場合は1人まで受け入れることができます。
第三に、暴力やパワーハラスメントなどの人権侵害を受けた場合等、やむを得ない事情がある場合の転籍は、転籍制限期間とは別に認められます。運用要領は、育成就労実施者が転籍を妨害する目的で試験を受けさせない、受験を妨害するなどの行為は育成就労計画の認定の取消事由となり得るうえ、そのような行為が認められた時点でやむを得ない事情があるものとして転籍が認められ得る、としています。
いつから変わるのか — 施行日と経過措置
育成就労制度の運用開始は令和9年(2027年)4月1日です。技能実習生に適用される経過措置は次のとおりです。
| 施行日時点の状況 | 取扱い |
|---|---|
| 施行日前に入国し、施行日時点で現に技能実習を行っている | 引き続き技能実習を行うことができる |
| 施行日前に技能実習計画の認定申請をしている | 施行日以後に技能実習生として入国できる場合がある(施行日から3か月以内に開始する内容の技能実習計画に限る。認定が施行日以後になる場合がある) |
| 施行日前に既に技能実習を終えて出国している | 技能実習生として再度入国することはできない(期間や職種によっては育成就労外国人として再度入国できる場合がある) |
重要: 上記に該当して施行日後も技能実習を行う場合には、技能実習制度のルールが適用され、技能実習から育成就労に移行することはできません。
技能実習3号への移行には、より厳しい制限がかかります。施行日(令和9年4月1日)時点で技能実習を行っている1号技能実習生は施行後も2号に移行できますが、技能実習3号への移行については、施行日時点で技能実習を行っている2号技能実習生のうち、2号技能実習を1年以上行っている者に限られます。外国人技能実習機構は、技能実習3号に移行するためには遅くとも令和8年(2026年)4月1日には技能実習2号の活動を開始している必要がある、と案内しています。
なお制度の準備は、令和7年3月11日の基本方針決定(閣議決定)、令和7年9月30日の主務省令公布、令和7年10月1日の政令公布と段階的に進められてきました。
特定技能1号への接続
育成就労は3年間で特定技能1号水準の技能を有する人材を育成する制度ですので、その先には特定技能1号(5年間)、さらに特定技能2号(在留期間の制限なし)という道筋が想定されています。
特定技能1号への移行には、技能検定試験3級や特定技能1号評価試験などの技能に係る試験と、日本語能力A2相当以上の試験(日本語能力試験のN4等)の合格が必要です。試験に不合格となった者には、再受験のための最長1年の在留継続が認められます。制度全体の見取り図は特定技能ビザ完全ガイド|1号・2号の違いと対象19分野を、その先の永住への道筋は特定技能2号の対象分野拡大|永住への道が開けた11分野をご覧ください。
現在技能実習中の方が特定技能1号へ移行する手続きは、経過措置により当面続きます。試験免除の条件など具体的な流れは技能実習から特定技能への移行手続き|試験免除の条件で解説しております。学歴と職務内容の要件を満たす場合には、技能実習から技人国ビザへの変更|要件・手続き・注意点という選択肢もございます。
受入企業がいま準備すべきこと
施行まで残された時間は限られています。実務上、次の5点を優先してご確認ください。
- 監理団体との関係の確認 現在の監理団体が監理支援機関の許可を取得する方針かどうかを早期に確認してください。許可を受けない団体を通じて育成就労を継続することはできません。
- 自社分野の分野別運用方針の確認 受入れ見込数の上限、転籍制限期間、転籍の要件となる技能・日本語の試験は分野ごとに定められます。分野別運用方針と分野別上乗せ基準告示は出入国在留管理庁のサイトで分野ごとに公開されています。
- 育成就労計画の設計 育成就労計画には期間(3年以内)と目標(業務、技能、日本語能力等)を記載し、外国人育成就労機構の認定を受けます。転籍制限期間を1年超とするか、1年としたうえで待遇向上の義務を負わない設計とするかは、経営判断として早めに整理しておくべき論点です。
- 日本語教育の体制 就労開始前に日本語能力A1相当を身に付けていることが前提とされています。認定申請時点でA1相当の試験合格を証明できない場合、入国後講習の日本語科目で認定日本語教育機関の「就労のための課程」による講習を100時間以上受講する必要があり、講習の総時間数は320時間以上となります。A1相当試験に合格している場合は総時間数220時間以上です。法的保護科目は8時間以上とされています。
- 住環境の整備 育成就労実施者又は監理支援機関は、育成就労外国人のための適切な宿泊施設を確保する必要があります。前提として、その宿泊施設が建築基準法上の基準を満たした「建築物」であることが求められます。
受入れ機関としての届出・支援の考え方は、特定技能で先行して制度化されています。特定技能の受入れ企業の義務|支援計画と届出のすべては、育成就労の受入れ体制を考えるうえでも参考になります。
技能実習生本人がいま知っておくべきこと
現在技能実習中の方は、次の3点をご確認ください。
第一に、令和9年4月1日の時点で技能実習を行っていれば、そのまま技能実習を続けられます。制度が変わるからといって、直ちに帰国しなければならないということはありません。ただし技能実習から育成就労へ移ることはできませんので、その先の進路は特定技能1号への移行などを軸に考えることになります。
第二に、技能実習3号を目指している方は、令和9年4月1日時点で2号を1年以上行っている必要があります。ご自身の2号の開始時期を、いま一度ご確認ください。
第三に、いったん技能実習を終えて出国すると、技能実習生として再度入国することはできません。ただし、技能実習を行っていた期間や職種によっては、育成就労外国人として再度入国することができる場合があるとされています。
まとめ
- 育成就労制度は令和9年(2027年)4月1日から運用開始。根拠は令和6年法律第60号。
- 目的は、技能移転による国際貢献ではなく、人手不足分野における人材の育成・確保。3年間で特定技能1号水準の人材を育成する。
- 本人の意向による転籍が一定の要件の下で認められる。転籍制限期間は分野ごとに1年以上2年以下の範囲内で定められ、一律ではない。
- 施行日時点で技能実習中の方は引き続き技能実習を行えるが、技能実習から育成就労には移行できない。
- 技能実習3号への移行は、施行日時点で2号技能実習を1年以上行っている者に限られる。
- 監理団体は、監理支援機関の許可を受けなければ監理支援事業を行えない。
当事務所のサポート
育成就労制度への移行、技能実習からの進路の設計、特定技能への在留資格変更に関するご相談は、金子英隆行政書士事務所にお任せください。受入企業側の体制づくりのご相談も、技能実習生ご本人からのご相談も承っております。
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よくあるご質問
育成就労制度はいつから始まりますか。
令和9年(2027年)4月1日から運用が開始されます。根拠となる法律は、令和6年6月21日に公布された「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第60号)で、一部の規定を除き令和9年4月1日に施行される予定です。
いま在留している技能実習生は、令和9年4月1日にどうなりますか。
施行日前に入国し、施行日時点で現に技能実習を行っている場合は、引き続き技能実習を行うことができます。この場合は技能実習制度のルールが適用され、技能実習から育成就労に移行することはできません。要件を満たせば次の段階の技能実習まで進むことができます。
技能実習3号にはこれからでも移行できますか。
技能実習3号に移行するには、令和9年4月1日の時点で技能実習2号の活動を行っている期間が1年以上であることが必要です。外国人技能実習機構は、そのためには遅くとも令和8年(2026年)4月1日には技能実習2号の活動を開始している必要があると案内しています。
育成就労では自分の意思で転職(転籍)できますか。
一定の要件を満たせば、本人の意向による転籍が可能です。要件は、直近の受入れ機関の下で転籍制限期間を超えて育成就労を行っていること、分野別運用方針で定める技能と日本語能力の試験に合格していること、転籍先が定められた基準に適合していることです。転籍制限期間は分野ごとに1年以上2年以下の範囲内で定められますので、ご自身の分野の分野別運用方針をご確認ください。なお、人権侵害を受けた場合など、やむを得ない事情がある場合の転籍は別に認められています。
技能実習の監理団体は、そのまま育成就労の監理ができますか。
できません。技能実習制度の監理団体であっても、監理支援機関の許可を受けなければ監理支援事業を行うことはできません。許可基準は技能実習制度より厳格化されており、外部監査の措置を講じることが法律上義務付けられています。
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