不法滞在者ゼロプランとは|外国人を雇用する企業がいま取るべき実務対応
不法滞在者ゼロプランとは|外国人を雇用する企業がいま取るべき実務対応
出入国在留管理庁は「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」を公表し、その後これを強化する「強力推進パッケージ」を取りまとめました。外国人を雇用する企業にとって最も関係が深いのは、雇用主の不法就労助長を積極的に摘発するという方針です。この記事では、プランの中身を一次情報で確認したうえで、企業と外国人ご本人がそれぞれ何を確認すべきかを整理いたします。適法に在留し、適正に雇用していれば恐れる必要はありません。
参照元: 出入国在留管理庁「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」(令和7年5月23日)/「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」(2026年5月22日掲載)/e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」
不法滞在者ゼロプランとは
「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」は、出入国在留管理庁が令和7年(2025年)5月23日に公表した施策です。「入国管理」「在留管理・難民審査」「出国・送還」の3段階に分けて、7つの柱が示されています。
| # | 柱(原文の見出し) | 段階 |
|---|---|---|
| (1) | 電子渡航認証制度(正式略称:JESTA)の早期導入 | 入国管理 |
| (2) | 退去強制が確定した外国人が多い国に対する働き掛け | 入国管理 |
| (3) | 難民認定申請の審査の迅速化 | 在留管理・難民審査 |
| (4) | 出入国在留管理のDX | 在留管理・難民審査 |
| (5) | 護送官付き国費送還の促進 | 出国・送還 |
| (6) | 改正入管法の新制度を活用した自発的な帰国の促進 | 出国・送還 |
| (7) | 被仮放免者の不法就労防止 | 出国・送還 |
このうち(1)のJESTAは、オンラインで事前に提供された情報をもとにスクリーニングを行う仕組みで、原文には「2030年の導入予定を前倒しして、2028年度中の導入を目指す」と記載されています。制度の内容はJESTA(電子渡航認証制度)の解説記事で詳しく扱っておりますので、あわせてご覧ください。
(3)の難民認定申請の審査の迅速化と(5)(6)の送還に関する柱は、退去強制手続に関わる事項です。本記事では事実の紹介にとどめ、企業実務に直結する(7)を中心に解説いたします。
強力推進パッケージで加わったもの
2026年5月22日、出入国在留管理庁は「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」を公表しました。同庁のページには、法務副大臣を中心に重点施策を検討し、約6万8千人(令和8年1月1日現在)の不法残留者数を減少させる観点から、「摘発の強化」を新規施策として加えたと記載されています。
パッケージでは、上記(7)に関連して次の取組が挙げられています。
不法就労助長者の摘発強化・厳正に対処。/不適正ヤード対策。/不法就労助長罪を各業法の欠格事由に盛り込むことを提案する(法改正が必要)。
(8)摘発の強化【新規】…合同・入管単独摘発の強化。/サイバーパトロールの実現。/情報提供、通報の促進策の検討。
「不法就労助長罪を各業法の欠格事由に盛り込む」という提案は、法改正が必要な段階の提案として記載されているものです。現時点で実現しているものではありませんが、方向性としては、不法就労助長が事業そのものの継続に影響し得ることを示しています。
企業に直接関係する柱:被仮放免者の不法就労防止
7つ目の柱の原文は次のとおりです。
被仮放免者の動静監視に注力し、不法就労の抑止を図る。 警察と協力して、被仮放免者の不法就労及び雇用主の不法就労助長を積極的に摘発する。
「雇用主の不法就労助長」が明記されている点が重要です。摘発の対象は働いた外国人だけではありません。
仮放免は在留資格ではありません。出入国在留管理庁の事業主向け資料では、仮放免は退去強制手続を受けている外国人について一時的に収容を停止する措置であり、仮放免された外国人は原則として仮放免許可書の裏面に「職業又は報酬を受ける活動に従事できない」との条件が付されているため就労できない、と説明されています。仮放免許可書は在留カードではありませんので、在留カードの提示がない方を雇い入れる場合は特に慎重な確認が必要です。
不法就労助長罪(入管法第73条の2)
不法就労助長罪は、入管法第73条の2に定められています。該当する行為は次の3類型です。
| 号 | 行為(条文) |
|---|---|
| 第1号 | 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者 |
| 第2号 | 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者 |
| 第3号 | 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者 |
法定刑は3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金で、これを併科することもできます。さらに入管法第76条の2(両罰規定)により、従業者が業務に関してこの罪を犯したときは、行為者を罰するほか、法人に対しても罰金刑が科されます。
「知らなかった」では済みません。 入管法第73条の2第2項は、不法就労に当たる事実を「知らないことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない」と定めています。出入国在留管理庁の事業主向け資料も、在留カードを確認していない等の過失がある場合には処罰を免れないと明記しています。
なお、令和6年法律第60号(令和6年6月21日公布)により、不法就労助長罪の罰則は「拘禁刑3年以下又は罰金300万円以下→5年以下又は500万円以下(併科可)」へ引き上げられることとされています。同法は一部の規定を除き令和9年(2027年)4月1日に施行されるとされています。
そもそも「不法就労」とは
出入国在留管理庁は、不法就労となるのは次の3つの場合であると説明しています。
- 不法滞在者や被退去強制者が働くケース(例:在留期限の切れた人が働く)
- 出入国在留管理庁から働く許可を受けていないのに働くケース(例:留学生が許可を受けずに働く)
- 現に有している在留資格等で認められた範囲を超えて働くケース(例:留学生が許可された時間数(原則週28時間以内)を超えて働く)
3つ目は、適法に在留している方でも起こり得る類型です。在留資格ごとに認められる業務の範囲については技人国を雇う企業側の要件と注意点もご参照ください。
企業が取るべき実務
1. 在留カードの確認
出入国在留管理庁は、在留カードの2か所を確認するよう案内しています。
| 確認箇所 | 見るポイント |
|---|---|
| 表面「就労制限の有無」 | 「就労制限なし」なら就労内容に制限なし。「就労不可」「在留資格に基づく就労活動のみ可」「指定書により指定された就労活動のみ可」の記載があれば制限内容を確認 |
| 裏面「資格外活動許可欄」 | 「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く。)」等の記載があれば、その範囲で就労可能 |
「指定書により指定された就労活動のみ可」の場合と、在留資格が「特定技能」の場合は、指定書そのものの確認が必要です。また在留カードには、在留資格及び在留期間の満了の日が記載されています(入管法第19条の4第1項)。在留期間の満了日の管理は企業側でも行ってください。
2. ICチップの読取り確認
出入国在留管理庁は「在留カード等読取アプリケーション」を無料で配布しています。ICチップに記録された情報を読み取り、券面に記載された情報と見比べることで、偽変造されていないかを簡単に確認できます。対応環境はWindows 11、macOS 13以降、Android 12.0以降、iOS 16.0以降です。令和7年11月14日以降は、同アプリから在留カード等番号の失効情報照会も利用できます。
実在する在留カード番号を悪用した偽造カードも存在するため、番号照会の結果だけで有効性が証明されるわけではない、と同庁は注意を促しています。ICチップの読取りと券面の目視確認を組み合わせるのが確実です。
3. 確認記録の保存
在留カードの写しや読取りアプリの確認結果、確認日と確認者を記録として残してください。条文上の義務ではありませんが、「過失がなかった」ことを説明する材料になります。在留期間の満了日を一覧化し、更新申請の時期を管理する台帳を作っておくと、更新忘れによる意図しない不法就労を防げます。
4. 外国人雇用状況の届出
労働施策総合推進法第28条第1項により、事業主は外国人の雇入れ・離職の際に、氏名・在留資格・在留期間等を確認し、ハローワークへ届け出る義務があります。対象は在留資格「外交」「公用」及び特別永住者を除く外国人です。
| 区分 | 様式 | 期限 |
|---|---|---|
| 雇用保険の被保険者となる方(雇入れ) | 雇用保険被保険者資格取得届 | 翌月10日まで |
| 雇用保険の被保険者となる方(離職) | 雇用保険被保険者資格喪失届 | 離職の翌日から起算して10日以内 |
| 雇用保険の被保険者とならない方 | 外国人雇用状況届出書(様式第3号) | 雇入れ・離職ともに翌月末日まで |
届出をせず、又は虚偽の届出をした場合は30万円以下の罰金です(同法第40条第1項第2号)。同条第2項に両罰規定があり、法人にも罰金刑が科されます。特定技能で受け入れている場合の届出については特定技能の受入れ企業の義務をご覧ください。
適法に在留している外国人本人にとっての意味
適法に在留し、在留資格の範囲内で就労している方が、この施策によって不利益を受けることはありません。確認していただきたいのは、次の基本的な義務です。
| 義務 | 根拠条文 | 期限・内容 |
|---|---|---|
| 在留カードの携帯 | 入管法第23条第2項 | 常に携帯(16歳未満は不要・同条第5項) |
| 提示への対応 | 入管法第23条第3項 | 入国審査官・警察官等の求めに応じる。ICチップの内容を確認する措置を受けることを含む |
| 新規上陸後の住居地届出 | 入管法第19条の7第1項 | 住居地を定めた日から14日以内 |
| 住居地の変更届出 | 入管法第19条の9第1項 | 新住居地に移転した日から14日以内 |
| 所属機関等に関する届出 | 入管法第19条の16 | 事由が生じた日から14日以内 |
在留カードを携帯しなかった場合は20万円以下の罰金(入管法第75条の3)、提示を拒んだ場合は1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金(同法第75条の2)です。届出をしなかった場合は20万円以下の罰金(同法第71条の5)、虚偽の届出をした場合は1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金(同法第71条の2)となります。
さらに、住居地の届出を怠ると在留資格の取消事由になります。入管法第22条の4第1項第8号・第9号は、新たに中長期在留者となった日から90日以内に住居地の届出をしないこと、届け出た住居地から退去した日から90日以内に新住居地の届出をしないことを、それぞれ取消事由として定めています(正当な理由がある場合を除く)。転職や退職の際の届出については技人国ビザで転職する場合の手続き、取消制度全般は技人国ビザの取消リスクで解説しております。
最も多いご相談は、在留期間の更新を忘れていたというものです。更新申請は在留期間の満了日までに行う必要があります。在留資格の基本については在留資格とは?基本を押さえようもご参照ください。
まとめ
- 「不法滞在者ゼロプラン」は令和7年5月23日公表、7つの柱で構成されています。
- 2026年5月22日の「強力推進パッケージ」で「摘発の強化」が新規施策として加わりました。
- 企業に直結するのは「雇用主の不法就労助長を積極的に摘発する」という方針です。
- 不法就労助長罪(入管法第73条の2)は3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金。知らなかったことを理由に処罰を免れることはできず、法人にも罰金刑が科されます。
- 企業の備えは、在留カードの2か所の確認、ICチップの読取り、確認記録の保存、ハローワークへの届出の4点です。
- 適法に在留している方は、携帯義務と14日以内の各届出を守っていれば問題ありません。
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よくあるご質問
不法就労助長罪は「知らなかった」で許されますか。
許されません。入管法第73条の2第2項は、不法就労であることを知らなかったことを理由に処罰を免れることはできないと定めています。ただし過失のないときはこの限りではないとされており、在留カードを確認していないなどの過失があれば処罰の対象になり得ます。
在留カードはどこを見れば就労の可否が分かりますか。
表面の「就労制限の有無」欄と、裏面の「資格外活動許可欄」の2か所です。表面に「就労不可」とあっても、裏面に資格外活動許可の記載があれば、その範囲内で就労できる場合があります。
外国人雇用状況の届出はいつまでに行いますか。
雇用保険の被保険者となる方は、雇入れが翌月10日まで、離職が翌日から起算して10日以内です。被保険者とならない方は、雇入れ・離職ともに翌月末日までにハローワークへ届け出ます。
適法に在留していれば、この施策を恐れる必要はありませんか。
適法に在留し、在留資格の範囲内で就労している限り、恐れる必要はありません。ただし在留カードの携帯・提示義務や住居地・所属機関の届出(14日以内)といった基本的な義務は確実に果たしてください。
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